永田明史とインド料理・・6

 1978年4月、祭りを控えてジワジワ活気づく浜松のお茶の間に、風変わりなテレビCMが流れた。ジャジャーンという出囃子とともにインド人のイラスト。「二度食べたらやめられない!」うわずった声のナレーションが響き渡った。
 「浜松で商売を始めるのは不安だったよ。東海4県、名古屋にすら本格的なインド料理店はないんだもん。だから浜松祭りの前にやってPRしようと毎晩のようにプランニング会社の人たちと会議した。僕が働いていた東京のインド料理店にも連れて行って、『こういう味のものを出したいんだ』って。かつてインドを植民地支配していた上流階級のイギリス人たちが集まるレストラン。それがコンセプトだった」
 モノトーンで統一された外観には白地に墨色で書いた「ボンベイ」の看板が飾られ、入り口には「Bombay」と英語の赤いネオンが灯った。ガラス張りのタンドールスペースが表通りに向かってせり出し、屋根には大きな木彫りの象が括り付けられた。
 「通りを歩いている人にナンを焼いているシーンを見せた。建ぺい率違反なの承知で無理やり作ったの。そうしたら女の子が外からそれを見て、『うわ~』って顔したりするじゃない。それがよかった。今はどこもやっているけど、当時あれは斬新なアイディアだった。」
 オープンの一週間前からテレビCMを流し、チラシを配った。
 「ま、食っていくくらいは何とかなるだろうって気持ちだったから、初日の仕込みなんてえらい少なかった。各メニュー20人分ずつ用意しただけ。そうしたら開店と同時にどどどどってお客さんが来て、30分で売り切れた」

続く

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